
新養育費算定表って?
明確な答えはなく、夫婦間で合意できれば自由に金額を決められます。
養育費を支払う義務者がとても裕福で余裕があるならば、
月に100万円払うこと、としても構いませんし、
逆に、養育費を受け取る権利者にとても余裕があるのなら、
0円としても構いません。
とはいえ、上記のようなケースはなかなかレアでしょう。
ほとんどの夫婦が離婚しようとするとき、一度は揉めるのが
養育費の金額ではないでしょうか。
そこで何か相場を示すような基準となるものを、と作られたのが、
現在、離婚裁判や調停で参考資料として使われている【養育費算定表】です。
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf
どうしても金額の折り合いがつかない場合、この算定表を基に
話し合いが進められるわけですが、金額が低すぎるという批判が多くありました。
離婚増加による母子家庭の貧困は、昨今の社会問題となっています。
親の離婚によって貧困に陥り、進学を断念せざるを得ない子供たちが増えている・・・
これはもはや、個々の家庭だけでどうにかする問題ではなく、
社会全体で取り組んでいかなければならないほど深刻な問題といえるでしょう。
そもそも養育費を支払う親は、子供が自分と同等の水準の生活を送れるような
金額を支払わなければ、親としての養育義務を果たしているとは言えません。
そこで、日本弁護士連合会(日弁連)が新たに打ち出したのが、
新養育費算定表です。
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2016/opinion_161115_3_01.pdf
既存の養育費算定表と新養育費算定表では、具体的にどのぐらい金額に差があるのか?
比較してみましょう。
例: 支払い義務者の年収 500万円 子供2人(0~14歳)
受け取り権利者の年収 250万円
現行の養育費算定表の場合
妥当な養育費は、毎月 4~6万円 となっています。
新養育費算定表の場合
妥当な養育費は、毎月 10万円 となっています。
これは、驚きの結果です!
双方の年収、子供の人数、年齢などによって、一概ではありませんが、
現行の算定表に比べて新算定表では、1,5倍~2倍もの金額に設定されているのです。
日弁連が新養育費算定表を発表したのが、2016年11月。
残念ながら、裁判所ではまだこの新算定表を採用はしていません。
そもそも、現行の養育費算定表にしても、参考資料として使用しているに過ぎず、
算定表通りの金額にしなければならないわけではありません。
それでは、別に新養育費算定表を参考にすればよいのでは??
と思ってしまいますよね。
その通りなんです。
現時点では、既存の養育費算定表が広く常識的に根付いているので、裁判所としては、
新養育費算定表を積極的に採用する理由がないということだと思うのです。
それをひっくり返すためには、世の中的に広く使われているのは新養育費算定表の方ですよ。
という状態にすることが必要なんですね。
そのために、弁護士が率先して新養育費算定表を使うことで、世の中や裁判所に
浸透させ定着させていく努力をしようと懸命に取り組んでおられます。
離婚協議中や調停中の方、新養育費算定表の存在を知っているのと知らないのでは、
話し合いの結果が大きく違うかもしれませんよ!
もしかしたら、きちんと取り合ってもらえず、結果は変わらないかもしれません。
でも、ご自分たちのケースでは、具体的に両算定表でどれほどの金額の差が出るのか、
しっかりと提示した上で、世の中的にはこういう新しい動きが出てきているのだと
いうことを主張することはとても大切なことではないでしょうか。
母子家庭の貧困の原因は、何も養育費の金額が低いことだけではありません。
他にも雇用の問題など社会全体で取り組み改善していかなければならないことが
山積みです。
とはいえ、養育費がとても大切であること、そして、現行の算定表による金額では
十分とは言えないことが広く浸透して、多くの方が新養育費算定表に基づく養育費を
受け取れるようになり、この国の未来を担う子供たちが十分な教育を受けられるための
一助となる日が、1日も早く訪れることを願わずにはいられません。